もう一度、HPVワクチン接種について

NPO法人日本小児肝臓研究 理事長 藤澤知雄

理事コラムでもHPVワクチンに関して必要性を述べています(2017.12.13理事コラム)。
もう一度、HPV感染とその後の宮頸がんに関して、素晴らしい企画がありました。

それは私が入会している、日本外来小児科学会の機関誌である第22巻(2019春)の特集に「子宮頚がんとHPVワクチンを考える」という論文掲載されています。日本外来承認小児科学会の編集委員会が企画した特集です。

この中にはわが国におけるHPVワクチンのこれまでの経緯を中村豊氏(ゆたかこどもクリニック)、HPVワクチンの有効性と安全性をどのように評価していけばよいのか? を原めぐみ氏(佐賀大医学部)、HPVワクチン接種後の慢性疼痛と機能性身体症状を奥山伸彦氏(JR東京総合病院)、HPVワクチンと接種後症状と疫学的因果関係を鈴木貞夫氏(名古屋市立大学)、子宮頸がんの現状と予防にむけて、を鈴木光明氏(新百合丘病院)、HPVワクチンの有効性:最近の動向を、関根正幸氏ら(新潟大学)、当院におけるHPVワクチンの個別的勧奨と効果を、片岡正氏(かたおか小児科クリニック)、どうするHPVワクチン:私の意見・提言を岡部信彦氏(川崎市健康安全研究所)の諸氏がわかりやすく記載しています。

私はじっくり読んで大変に参考になりました。皆様にもぜひ読んでいただきたいのですが一般に市販されていません。そこで、この特集を企画、編集した横田俊一郎氏と中村豊氏の「はじめに」の記載が大変に良くまとまっておりますので、これを抜粋・転載します。「HPVワクチン接種を勧めましょう」というタイトルがあります。

以下抜粋・転載です。

HPVワクチンは、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)を予防するワクチンです。
2013年4月に定期接種化された、「小学6年生から高校1年生相当の女子(標準的接種期間は中学1年生)」に3回接種を行うこととされています。しかしながら、接種後に広範な疼痛や運動障害など、多彩な症状が発現したことが報道されると、わずか2か月後の、「積極的な接種勧奨中止」という扱いになりました。制度上は定期接種に残されていますが、最近の接種率は1%以下とされています(厚生労働省.定期の予防接種実施者数)。

疫学調査から、接種後にみられた症状は必ずしもワクチンに関係したのではなく、非接種者にもみられることが判明しました。一方、使用を開始してから10年(日本では5年)を迎え、ワクチンの有効性は確固なものになりつつあります(Arbyn M. et al)。

このまま実質的な接種中止が続けば、接種対象年齢から外れてしまう対象者が数多くでてしまいます。ワクチンの性質上、感染後に接種しても効果がないことが考えられます。現在、接種対象年齢の子どもたちが接種するために残された時間は長くありません。

日本小児科学会や日本医師会など、多くの専門医集団が積極的接種勧奨再開を要望しています(予防接種委員会)。しかしながら、その見通しは立っていません。私たちは子どもがHPVに感染するのをそのままみすごすことはできません。定期接種として接種できる機会があるこことを知らず、HPV感染とそれに続く子宮頸がんのリスクを正確に伝え、信頼関係の中で接種を行うことができるのは、私たち小児科医であろうと考えます。私たち小児科医はこのHPVワクチン接種を勧めることは使命だと思います。最後まで読んでいただいき感謝いたします。