不登校について考える なぜ学校が嫌いになったのか
NPO法人日本小児肝臓研究所
藤澤 知雄
私は現在も済生会横浜市東部病院において子どもの肝臓病の専門外来を続けています。最近になって、とくにコロナ禍以降に不登校の子どもが増加しており、なぜ子どもたちが学校嫌いになったのか気になります。
不登校とは文部科学省によると、病気や経済的な理由など特別な事情がなく「年間の欠席日数が30日以上となった状態」のことを指しています。そして文部科学省は不登校の小中学生は2022年度に過去最多の約30万人と公表しています。この数は学校教育の危機的な状況を示すもので、少子化対策でも重要な課題だと思います。
学校へ行きたくない理由を知って驚くのが、「学校は面白くない」という点です。私は社会的には団塊の世代(1947~1949年生まれ)です。出生数は今の約3倍でした。小中学校も一クラス60人のスシ詰め状態でした。もちろん、当時から病欠で不登校の子はいましたが、学校嫌いはほとんどおりませんでした。家にいてテレビはなく、冷蔵庫もなく、一人でいると退屈で面白くありません。家にいるより、学校に行って同級生とワイワイやって、休憩時間や放課後は校庭で遊んでいました。また、貧しいながら、給食もあり、ひもじい思いはしませんでした。
現在では自宅に、テレビ、ゲーム、パソコンなど豊富な遊び道具があります。また冷蔵庫の中には何か食べ物や飲み物が入っています。しかもコロナ禍で生活環境の変化あって、友達との交流も少なく、親友はできない環境はあったと思います。そんなことから学校は「面白くない」、まだ家にいた方が良いと考えたのだと思います。
文部科学省は「不登校を問題行動と判断すべきでない」と全国の学校に」通知したと聞きます。学校に行かない状況は同じでも、行きたくない、行きたくとも行けないなど、思いは異なりかなり複雑だと思います。私たち小児科医は子どもたちの希望に沿った学びを支援したいと思っています。具体的には学校以外の場所に、フリースクールを増やし、学校に行かなくてもフリースクールには行きたいと思う環境をつくりたいと思います。現在、文部科学省は民間、個人、NPO法人が経営するフリースクールとの連携を模索し、認知度の向上に取り組んでいるようです。
しかし、不登校児の支援策に責任をもつ為政者の意識はまだ遅れており、例えば滋賀県の某市長はフリースクールをめぐる発言で「文部科学省がフリースクールを認めたことに愕然としている」「不登校の多くは親の責任だ」などと話し、一部は撤回したものの、こんなレベルの低い為政者がいることに驚きます。
現在、フリースクールは学校との連携ができれば、出席扱いになり、将来の進学などに不利にならないようにしております。不登校児の増加は国の問題です。私たちも一人一人が何をできるか模索していきたいと思います。